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チームラボがPM・ディレクターではなく『カタリスト』を作った背景とは|創業メンバーインタビュー#2

みなさんこんにちは、チームラボ採用担当です。今回は、チームラボ創業メンバーの堺大輔がIT、WEB、ゲーム業界に特化した人材紹介会社のアールストーンにインタビューを受けた際の記事をご共有します。
チームラボが進めている様々なプロジェクトにおいて、クオリティの高いモノを作るために、エンジニアやデザイナーたちが力を発揮できるよう、ハブとなり、チームを導いていく、プロデューサー的ポジションである『カタリスト』についてお話させて頂きました。

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プロフィール

■チームラボ 取締役 Director,Co-Founder 堺大輔
1978年生まれ、北海道札幌市出身。東京大学工学部機械情報工学科、東京大学大学院学際情報学府修了。大学時代は、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システム関する研究を行う。チームラボでは、ソリューション事業を担当。

■株式会社アールストーン 代表取締役 吉岡誠司氏
大手人材紹介会社にてコンサルタントとして実績を残し、執行役員に。その後子会社立ち上げで代表取締役としての就任、自身での人材紹介会社の起業等を経て、2019年よりアールストーンの代表を務める。

■株式会社アールストーン コンサルタント 高山勇気氏
BtoCの営業統括を経て、HRベンチャーとして注目されているアールストーンへ転職する。エンジニアなどの採用支援が得意領域。

プロジェクトの中心には、”カタリスト”がいる。


アールストーン・吉岡氏 : チームラボさんには、IT業界で一般的なPL・PM(プロジェクトリーダー・マネージャー)といったポジションは無く、それに代わる”カタリスト”というポジションがあると伺いました。その点が非常にユニークだと思いますが、チームラボさんにおけるカタリストとはどのような役割やミッションを担うのか。まずはそれについてお聞きしたいと思います。

チームラボ・堺 : カタリスト(Catalyst)とは、英語で触媒という意味がありますが、その業務はプロジェクトマネジメントやディレクションが主になります。それ以外にも、プランニングやコンサルタント的な動きをすることもめずらしくなく、多様なバックグラウンドを持ったカタリストが在籍しています。

アールストーン・高山氏 : 一般的なPLやPMとの違いは、どこにあるのでしょうか。

チームラボ・堺 : 私たちは実際に手を動かすエンジニアやデザイナーたちがクリエイティブ力を発揮することが、クオリティの高いモノを作るためには必要だと考えています。その中で、プランナーがプランニングしたものをエンジニアやデザイナーが形にするだけでは、そこには到達することはできません。システムやデザイン、プランニングが三位一体となってモノをつくっていかなければならない。

そのためにカタリストが存在しています。エンジニア、デザイナーのハブとなり、触媒となって、何が最適解かをチームで考えられるように導いていくのです。カタリストをPL・PMやディレクターにしてしまうと、ただ指示をしたり、管理するだけになってしまいますから。

アールストーン・吉岡氏 : カタリストとは、どのような経験を積まれた方が担当されていますか?

チームラボ・堺 : カタリストには、多様なバックグラウンドを持った人がいます。デザイン会社やコンサル会社、など、出身はバラエティに富んでいますね。そのため、UI・UXに強い、システムに強い、デザインに強いと、得意領域も分かれています。その中でシステムに強いカタリストを“システムカタリスト”と呼んでいます。

システムカタリストに関しては、PM的な動きやシステム、アーキテクチャーの管理、設計にも関わり、何十人というプロジェクトメンバーのタスク管理も担当します。もちろん、開発はエンジニアが、アーキテクチャーを考えるアーキテクトもいますが、お客様との間に立ちながら技術的な話しを分かりやすく伝えるために、技術的な部分にも積極的に関わっていきます。

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アールストーン・吉岡氏 : お話しを伺っていると、カタリストは業界内でも特徴的な存在だと思います。どのような経緯で、このポジションが生まれたのでしょうか。

チームラボ・堺 : 昔は当社にもPMチームがあったのですが、線表を引いて、メンバーにタスク振って、スケジュール管理するといった仕事がメインになってきてしまった。そうすると、管理することばかりに目がいってしまい、アウトプットのクオリティを高くするという視点を持てなくなってしまったのです。

クオリティの高いアウトプット、つまりアプリなどをエンドユーザーに使ってもらい、クライアントが喜び、私たちも嬉しくなるという、チームラボが目指すところから離れてしまった。――そこで、PMチームを解散し、カタリストというポジションを新設したのです。UI・UXや情報デザイン、システムに強い人をPMとしていましたが、彼ら全員カタリストにしました。

アールストーン・高山氏 : “プロジェクト管理”ではなく、”クオリティの高いアウトプットを実現する”ためにつくったポジションなのですね。

チームラボ・堺 : もちろん、PM的な役割も必要ですが、カタリストはシステムの中身が理解できて、仕様に関しても話せて、大枠が分かることが大切です。客先にはエンジニアと一緒に行くので、専門性は彼らが担保し、大枠を理解しながらお客様に技術的な話を説明し、最適なソリューションを提案するのが重要なミッションとなります。

一般的なIT企業などの場合、役割や階級でプロジェクトを管理する人が決まると思います。つまり、線表を引くのが、偉い人になるわけですね。私たちは、役職や環境が人をつくると思っているので、管理者が偉い人だと、それをやること自体が偉いというように目的がすり替わってしまう。結果、どんなアウトプットをするべきかではなく、どう管理するかに目がいくようになってしまうのです。

UI・UXは、デザインとシステムがしっかり組み合わせないと良いモノが提供できません。UXを考えるカタリスト、UIを考えるクリエイティブチーム、それを実現させるシステムチーム。それらが三位一体とならなければ、クオリティは上がっていかないのです。

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ユーザーファーストなサービスの実現を目指し、幅広い知識・専門性でクライアントに向き合い提案まで行う


アールストーン・吉岡氏 : カタリストが中心となり、どのようなプロジェクトを進めていますか。具体例をお伺いできればと思います。

チームラボ・堺 : 昨年、りそな銀行のインターネットバンキングアプリをリリースしました。こういったアプリは各行ありますが、ユーザーから厳しい評価の声が上がることも少なくありません。しかし、当社が開発した「りそなグループアプリ」は、グッドデザイン賞を受賞し、ユーザーからの評価も上々です。

最終的なUI・UXは非常にシンプルなのですが、細かい部分の積み重ねで、ここまでのクオリティに仕上げられました。明細ひとつ見るにしても、5回タップするのか、1回タップするかでユーザーの満足度は変わります。預金者の口座の使い方をデータで見ていくと、子どものための貯金や給与口座、住宅ローンの支払い用など、使い方が色々あることに気が付きました。それらを踏まえて、シンプルで、どんな用途でも使いやすいように突き詰めていったことが、好評を得た理由だと実感しています。

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▲りそなグループアプリ
https://www.team-lab.com/resonasmartapp/

アールストーン・高山氏 : そこまでのアプリをチームラボさんが実現できるのは何故ですか?

チームラボ・堺 : トップページに明細を表示するために、裏側には大きなシステムが動いていて、そこからデータを引っ張り出すわけです。ただし、一度にデータを取り出して明細を表示することはシステム上不可能なため、一度データをためて、様々な場所からデータを集めなければならない。凄く細かい話ですが、そういったシステムの別の使い方まで、提案できるのが私たちの強みですね。システムはもちろん、UI・UXを知っている人がいなければ、ここまでの提案をすることができません。そうでないと「このAPI仕様書通りにつくりますね」と、なってしまいますから。

アールストーン・吉岡氏 : システムからUI・UXまで知っているから、深い提案ができるわけですね。

チームラボ・堺 : カタリスト――特にシステムカタリストの場合、お客様とエンジニアの間に立ってシステムを説明し、実現可能かそうでないかを判断しながらソリューションを提案していきます。そして、社内でも話し合いの場を設けて、目指すUI・UXに辿り着けるように導いていきます。それらをスケジュールに落とし込んで、プロジェクト管理を進めます。

「りそなグループアプリ」に関しても、それらすべてをカタリストが対応したからこそ、リリースできたのです。デザインだけなら、このアプリは誰にでも企画できたかもしれません。しかし、これを実装し、運用まで形にするのが非常に難しいのです。システムとUI・UX、デザインが手を組んだからこそ、企画からリリースまで約1年で完了しました。

アールストーン・吉岡氏 : 堅牢なシステムを有する金融業界において、1年でのアプリのリリースはとても早いように感じます。

チームラボ・堺 : たしかに、金融業界の中ではかなりスピーディーな動きですね。それは、裏側のシステムを担当している大手SIとも会話をし、協力を得ながら進めていた、システムカタリストがいたからこその結果です。そして、お客様とどういったアプリを開発するのか要件を固めて、ウォーターフォールでしっかりと開発したから。

アジャイルにしてしまうと、リファクタリングしなければならないので時間を要しますし、メンテナンスのアビリティも悪くなる。銀行のようなシステムはミッションクリティカルなので、システムがぐちゃぐちゃだと非常に困りますからね。ただし、追加開発はアジャイルで進めていて、ウォーターフォールとアジャイルを上手く組み合わせています。

アールストーン・高山氏 : カタリストがいることで、お客様との意思疎通も円滑に進んでいくのですね。

チームラボ・堺 : そうですね。他にも同じように、大手ベンダーさんともやり取りをしています。私たちは大規模プロジェクトに関わることが多く、ベンダーさんと外部連携しながら開発するシステムが大半です。そういった方々と上手にやり取りしながら交通整理していかないと、プロジェクトの成功は難しくなります。

アールストーン・吉岡氏 : 大規模案件でもアサインされるカタリストは1名ですか。

チームラボ・堺 : 大きな案件ですと、UI・UX専門のカタリストとシステムカタリストの2名が入る場合があります。もちろん、両方を見ることができるカタリストなら1人で担当しますが、大規模の場合は2名が多いですね。

常に学ぶ姿勢を持った人材を、求めている。


アールストーン・吉岡氏 : 他にも代表的なプロジェクトがありましたら、ぜひご紹介ください。

チームラボ・堺 : ANAのマイレージアプリ「ANAマイレージクラブ」も当社が手がけました。これは、ターゲットを“マイレージが大好きな人”に絞り込んで開発したアプリです。そのため、ユーザーがマイル確認の際にとにかくテンションが上がる演出を心がけました。

それらをシステムカタリストとUI・UXチーム、スマホアプリ専門のデザイナーチームが三位一体となってつくり上げたのです。デザイナーがどんなに動きを格好良くしたくても、アプリの挙動が重くなってしまうと意味がないので、それぞれが知恵を出し合いながら開発していきました。今後はスマホアプリでも、様々なクリエイティブが求められるようになりますので、そういった部分により注力していくつもりです。

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▲ANAマイレージクラブ アプリ
https://www.team-lab.com/ana2016/

アールストーン・吉岡氏 : 先程、プロジェクトに関わるチームの話も出ましたが、チームラボさんではどのような編成が多いのですか?

チームラボ・堺 : プロジェクトをまとめる役割のリーダーはいますが、レビューは専門性の高い人に入ってもらいますので、チームは階層的ではありません。スキルセットやナレッジ、ノウハウがある人の声が大きい方がよいと私たちは考えています。

カタリストでも銀行の基幹系や流通の業務システムの出身者など得意領域はあるので、そこは業務を分担しながらそれぞれの領域で活躍していますよ。「クオリティが高いモノを、つくるにはどうすればいいのか」という共通言語のもと、カタリストが意見を言う場合もあれば、メンバーの意見を聞くこともあります。そういった関係性で、プロジェクトを進めています。

アールストーン・高山氏 : 最後に、カタリストに求められるマインドがあれば、ぜひ教えてください。

チームラボ・堺 : 何より、クオリティの高いモノをつくろうとする意識ですね。そういったことが好きでないと、やっていけないので。その中で、スキルの専門性があった方が良いですが、そこはあまり重要視していません。技術はどんどんと変わっていき、10年前と今でさえ大きく違います。そんな状況の中で、40代のカタリストも活躍していて。彼らは勉強を怠りませんし、若い人の話も聞いて学ぼうとしている。そういった姿勢を持った人が、カタリストとして大成すると思っています。

そして、自分の役割を果たしながら、良いことを周囲にも波及させる社員をチームラボでは高く評価しますので、そういった人に来ていただけると非常に嬉しいですね。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。チームラボでは通年を通してカタリストとして入社して頂ける新メンバーを募集しています。皆様、ご応募お待ちしています。


カタリストポジション一覧

今回はカタリストについてのご紹介でしたが、チームラボのCTOがエンジニア組織について話させて頂いたインタビューもございますので、ぜひご覧くださいませ。


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